2045年問題 人工知能(AI)が人類を越えるとき

 

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2045年問題とは

西暦2045年にコンピューターの能力が人類を越えるという予測があり、それによって起こるさまざまな問題のこと。

人工知能(artificial intelligence、AI)が自らを規定しているプログラムを自身で改良するようになると、永続的に指数関数的な進化を遂げる。この結果、ある時点で人間の知能を超えて、それ以降の発明などはすべて人間ではなく人工知能が担うようになり、それ以降の進歩を予測できなくなる。(人間がいくら考えても想像ができないレベルに達する。)

レイ・カーツワイルは、著書『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』中で、2045年にその特異点を迎えると予言している。

レイ・カーツワイルの予測

レイ・カーツワイル(1948年-)は、アメリカの発明家・未来学者で人工知能研究の世界的権威。音声認識やスキャナーなどの発明がある。米マイクロソフトの元会長ビル・ゲイツは「わたしの知る限り、 人工知能の未来を予言しうる最高の人物だ」と評している。

レイ・カーツワイル 2045
livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/a/5/a5849909.jpg

「ムーアの法則」は、集積回路の密度が18カ月から2年で倍増するという有名な予測。

レイ・カーツワイルはムーアの法則を拡張し、進化の法則はコンピューター・チップだけでなく、宇宙のあらゆる現象に適用できると考えた(収穫加速の法則)。そして、人工知能の性能が全人類の知性の総和を越える「(技術的)特異点、シンギュラリティ」(Technological Singularity)と呼ばれるものが、2045年に来ると予測している。このため「シンギュラリティ」は「2045年問題」とも呼ばれている。

2029年

コンピューターの知性が、人間を超える時期を2029年と予測。

2045年、技術的特異点

コンピューター・人工知能の能力が、全人類を合わせた位の知能をもつようになる時期を2045年と予測。

ヒューゴ・デ・ガリスの予測

オーストラリアの人工知能学者 デ・ガリスは、人工知能は急激に発展して、シンギュラリティが21世紀の後半に来ると予測。その時、人工知能は人間の知能の1兆の1兆倍(10の24乗)になると主張している。デ・ガリスは、この人間の脳の1兆の1兆倍の能力をもつコンピューターは、将来、角砂糖1個くらいの大きさになる、と言っている。それを人間に貼り付けると、人間の知能は10の24乗倍になる。

※人間の脳の細胞は10の11乗個あるといわれている。ひとつの脳細胞からシナプス(神経細胞と神経細胞の接合部)が1万本(10の4乗)でているとして、合計10の15乗本。それらが10ヘルツ、つまり、1秒に10回スイッチングすれば、1秒間に10の16乗回演算できる。それが人間の脳の性能とみなせる。将来のコンピューターが10の40乗で、人間の脳が10の16乗。この違いが、10の24乗倍、すなわち、1兆の1兆倍になる。

出典 http://wired.jp/special/transcendence/

人工知能とは

学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューターシステム。「大辞林」

人間の知能と同じ様なこと(考えること)を機械にさせるのが、人工知能。普通、機械は人間の筋肉(手や足)の代わりをする。例えば、自動車は人間の足の代わりをするなど。

人工知能の身近な例

・スマートフォンの音声応答
・グーグル検索
・将棋、チェス、囲碁
・ワトソン(IBMが開発した質問応答システム・意思決定支援システム)。みずほ銀行がコールセンターに人工知能ワトソンの導入を発表している。(2014年)

チェス、将棋、囲碁

チェスも将棋もすでにコンピューターが人間の実力を上回っているとされている。チェスでは、1997年に、スーパーコンピューター「ディープブルー」が、当時の世界チャンピオンに勝利し、将棋でも、2012年にコンピューターがプロ棋士の米長邦雄を初めて破っている。

2016年1月、Googleの子会社が開発した人工知能(AI)のコンピュータソフト「アルファ碁(AlphaGo)」が、2013年から2015年まで欧州囲碁選手権を3連覇したファン・フイ(中国、プロ二段)と対局し、5戦全勝した。「コンピューターは将棋でプロと同等まで強くなったが、囲碁は10年以上先になる」と言われていた。アルファ碁は「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる人工知能の新技術を取り入れ、自分自身と戦わせるなどして囲碁の特徴を自己学習できるという。


afpbb.com/articles/-/3129702 アルファ碁vs柯潔 第2局

2017年5月、アルファ碁と中国の世界最強棋士、柯潔(か・けつ)九段(※非公式の棋士レーティング世界1位)との三番勝負が行われ、アルファ碁が3連勝した。アルファ碁を開発したグーグル傘下のAIベンチャー、英ディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)は「人間と対局するのはこれが最後になる」と語り、アルファ碁の事実上の引退を宣言した。

ワトソン

IBM ワトソン
edition.cnn.com/2011/TECH/innovation/02/07/watson.ibm.jeopardy/

「ワトソン」は、2011年に米国のクイズ番組「Jeopardy!」でチャンピオンを破ったことで一躍有名になった。さらに、IBMは「ワトソン」を医者の補助として利用する事を考えた。ワトソンは100万冊を一遍に読むことが可能なので、ある患者を見た時に、病気の可能性が何%かを推測し、癌の時にどういう治療法が良いかを示してくれる。

松田卓也の解説

※松田卓也(1943年- )は、日本の天文学者、宇宙物理学者。神戸大学名誉教授。理学博士(京都大学)。1960年代から大型コンピューターを駆使した研究を行うなどコンピューターの最新事情に詳しく日本の2045年問題研究の第一人者。

人工知能は「強い人工知能」と「弱い人工知能」に分類できる。強い人工知能とは意識を持った人工知能で、いまだ実現していない。現状の人工知能はすべて弱い人工知能である。

弱い人工知能は特定目的の人工知能である。たとえばチェスや将棋をする人工知能、クイズ番組に答える人工知能などである。特定の問題に関しては、すでに人工知能は特定の分野における最強の人間より賢い。

特定の分野でない人工知能を汎用人工知能(General Artificial Intelligence)と呼ぶ。強い人工知能はまだ実現していないが、SFではたとえば、映画『2001年宇宙の旅』(1968年公開)に登場するHAL 9000がその例である。

人工知能とそれにコントロールされるロボットの技術は現在、猛烈な勢いで進歩していて、その結果、技術的失業(技術の進歩によって起こる雇用の喪失。 テクノロジー失業などとも言われる。)という現象がおき始めている。

良い点は、人間がやりたくない仕事を代わりにやってくれること。医学の進歩、自動運転にすると交通事故率が圧倒的に減るなど。
悪い点は、運転手がいらなくなり、運転手は失業する可能性がある。2015~2045年の間は、科学者、運動選手、芸術、感情的な仕事(看護師など)は大丈夫。」

仕事関係

・中国でスマホを作っている会社は100万人の労働者を雇用しているが、経営者は労働争議を避けるために100万台のロボットの導入を決めた。

・グーグルは運転手なしの車を実用化したが、そのうちタクシーやトラックの運転手が失業するだろう。

・アメリカでは株取引のほとんどは人工知能が行っている。新聞記事作成、裁判の証拠書類の読み込み、学校の試験問題の採点、コールセンターの応答なども、ほぼ実用化の段階に入っている。今後10~20年で現在ある仕事の半分がなくなるという。

出典 京都新聞 2014年11月07日
http://www.kyoto-np.co.jp/static/info/sofia/20141107_2.html

関連

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機械学習

膨大なデータから傾向を読み取ることを機械学習というが、それが現在の人工知能の流行。膨大なデータの中から人間には見えない様な傾向を探知するのが現在の人工知能。

※機械学習(machine learning)とは、人工知能における研究課題の一つで、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする技術・手法のこと。

未来の姿を描いたNHKスペシャル「ネクストワールド私たちの未来」(2015年)では、すでに行われている事として、コンピューターの予測に基づいてパトロールを行い、検挙率が大幅にアップしたというアメリカの警察の取り組みが紹介された。過去に、どの時間帯に、どのあたりで、どれだけの犯罪が起こったかのデータから、犯罪の発生を予測している。

懸念

スティーヴン・ホーキング、イーロン・マスク、ビル・ゲイツがオープンレター(公開状)を出し、超知能の危険性を訴えている。

スティーヴン・ホーキング(1942年-2018年)
イギリスの理論物理学者。

完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない
「人工知能が自分の意志をもって自立し、そしてさらにこれまでにないような早さで能力を上げ自分自身を設計しなおすこともあり得る。ゆっくりとしか進化できない人間に勝ち目はない。いずれは人工知能に取って代わられるだろう」
「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。だが同時に、『最後』の出来事になってしまう可能性もある」(2014年)

2015年5月にロンドンで開催された「Zeitgeist 2015」のカンファレンスで、ホーキング博士は「今後100年以内に人工知能が人間を超えるだろう」と警告した。
出典 http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/03/stephen-hawking-ai-spell-the-end-_n_6266236.html

イーロン・マスク(1971年-)
アメリカの実業家、投資家。スペースX社、テスラの共同設立者およびCEO。

「AIによって、われわれは悪魔を呼び出そうとしている。五芒星と聖水を持つ男が登場する物語は皆さんもご存じだろう。その男は悪魔を操ることができると確信しているが、実際にはそれは不可能だ」「(AIは)もしかすると核兵器より危険かもしれない」(2014年)
出典 http://japan.cnet.com/news/business/35055691/

ビル・ゲイツ(1955年-)
マイクロソフトの共同創業者

「わたしも超知能に関して懸念を抱いている側の1人だ」「当面、機械は今後もわれわれのために多くのことをしてくれるはずで、超知的にはならない。うまく管理すれば、これ自体はプラスに評価できる。だが、こうした状況から数十年後には、知能が強力になり、懸念をもたらす」(2015年)

出典 http://japan.cnet.com/news/society/35059666/

研究者

2014年にオックスフォード大学の研究者であるヴィンセント・ミュラー氏とニック・ボストロム氏が行った人工知能についての調査によると、170人の研究者の内18%が「今後人工知能は人間の存在を脅かす可能性が十分にある」と答え、13%が「今後人工知能が人間にとって不利益になる」と回答。また、ほとんどの研究者は、人工知能が人間の知能を超えることは避けられないと考えている。

出典 http://gigazine.net/news/20150529-ai-will-overtake-humans/

人類の未来

※以下、松田卓也の話から

強い人工知能が実現したとして、人類のあり得る未来は大きく分けて二つの道が考えられる。

①すごい能力を持った機械の人工知能がある時できて、それが人類を滅ぼしたり支配したりする。
②人間が人工知能と一体となって、人間の知能を強化する(知能増強)。

※知能増強(Intelligence Amplification)とは、人類の知能を増強する技術。知能増強法として有効と思われるのは、コンピュータと人間の一体化であろう。SFなどではジャックインといって、脳に直接コンピュータを接続する方法も考えられている。
[出典 基礎科学研究所 2013-09-06 松田卓也 http://jein.jp/jifs/scientific-topics/838-2045.html]

人間と人工知能が一体になるという発想は、「攻殻機動隊」に描かれている。

人類がコンピュータに支配されるという世界。

映画「ターミネーター」においては、未来はスカイネットとよぶ人工知能が世界を支配し、人類は存亡の危機にさらされている。映画「マトリックス」では人間の脳がコンピューターにつながれていて、人間が仮想現実の中で夢を見させられている。これは、シミュレーション仮説と言われている。

※シミュレーション仮説とは、人類が生活しているこの世界は、すべてシミュレーテッドリアリティ(一般にコンピュータを使ったシミュレーションによって真の現実と区別がつかないレベルでシミュレートすることを指す。)であるとする仮説のこと。

哲学者ニック・ボストロムは、今のわれわれの世界は、「マトリックスに描かれているような世界(仮想現実)ではない」と証明できないと言っている。

松田卓也は2100年の世界を次のように予測している。

2100年の世界では、巨大なスーパーコンピューターがあって、死んだ人間の魂・精神を皆そこへ持って行って、魂・精神が残るという様なこともあるのではないか

出所 松田卓也「NHK明日へのことば」「2045年問題」、他

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