[復習] 効果的な復習方法,復習のタイミング,回数,忘却曲線

 

効果的な復習のタイミングと、復習の回数について。

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海馬(かいば)の役割


出所 wikipedia
脳内での海馬の位置。赤で示した部分が海馬。

海馬(かいば、英: hippocampus)は、脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官。脳の一部位で、耳の奥にある。太さ約1cm、長さ約5cmでタツノオトシゴのような形をしている。

私たちの脳はすべての情報は記憶ぜず、海馬が必要と判断した情報だけが、脳の中の大脳皮質に送られて、長期保存される。

海馬は何を基準に記憶する必要があると判断しているのか。それは「生きていくために不可欠かどうか」。人間も動物で生き残ることが最も重要であり、食べ物や危険に関係する情報が優先される。

海馬は「生きていくために不可欠」と判断した情報だけを取捨選択して、長期記憶に送り込む。

記憶するためには反復が必要

どうすれば海馬に「必要な情報」だと判断させることができるのか。

その方法は、何度も復習する事。書いたり、声に出したりしながら復習すると効果的。生き死ににかかわらない情報でも、何度も繰り返し脳に送り続けると、海馬は「これは生きるのに必要な情報に違いない」と思ってしまう。

復習のポイントは、情報を暗記する「入力」だけではなく、覚えた内容をテストなどで確かめる「出力」も大事だということ。情報の入力と出力では、脳は圧倒的に「出力」を重要視する。「この情報はこんなに使われるのか。ならば覚えなければ」と海馬は判断する。

勉強の仕方でいえば、教科書や参考書を何度も見直すよりも、問題集を繰り返し解くような復習法のほうがより効果的

出典 池谷裕二教授 2014年 PRESIDENT ONLINE
http://president.jp/articles/-/12018

「覚え方」よりも「思い出す」機会を増やすことが大切

出典 岩波邦明、押田あゆみ 『人生が豊かになる<岩波メソッド>チェイン記憶術』

記憶の神経回路を脳に定着させるためには、覚えるインプットの作業よりも、覚えた記憶を思い出そうとするアウトプットの作業が大事。

『サイエンス誌』に掲載された、アメリカのパデュー大学、カービック博士の実験

ワシントン大学の学生を4つのグループに分け、40個のスワヒリ語(アフリカ東岸部で国を越えて広く使われている言語)を覚える試験を行った。どのグループも覚えた後にテストを行い、答え合わせと復習をしてから再テストをするのだが、グループごとにそのやり方を変えた。

第1グループ
すべての問題を復習し、40個すべてを再テスト
第2グループ
間違えたところだけを復習し、40個すべてを再テスト
第3グループ
すべての問題を復習し、間違えたところだけを再テスト
第4グループ
間違えたところだけを復習し、間違えたところだけを再テスト

大まかにいうと、
第1・第2グループでは「40個すべての再テスト」を行い、
第3・第4グループでは「間違えたところだけの再テスト」を行った。

するとその日、全問正解するまでのテストの回数には各グループに差はなかった。1週間後にもう一度テストをすると驚くべき結果が出た。

なんと、「40個すべての再テスト」を行った第1・第2グループは約80点、「間違えたところだけの再テスト」を行った第3・第4グループの成績は約35点と大きな差がついた。

この実験で分かったことは、「間違えたところだけを再テスト」する方式は有効性が乏しいということ。そして、もっと重要なのは、記憶を定着させるためには、「覚え方」よりも「思い出す」機会を増やすことがいかに重要であるか、ということ。つまり、情報のアウトプットが記憶力に大きく大きく関係していることが示された。

海馬での記憶保存期間は約1カ月

海馬が情報を一時的に保存しておく期間は約30日間。30日を過ぎると短期記憶の中から放り出されて忘れてしまう。

覚えた漢字や英単語を忘れてしまったとしても、その単語が脳から完全に消えてしまうわけではなく、思い出せなくなっているだけで、実は脳に保存されている。その保存期間が約30日間。

実験詳細

出典:Medエッジ「忘れるまでの時間の秘密、脳で短期記憶を担う「海馬」で確認」(リンク切れ)
https://www.mededge.jp/a/psyc/17906 

バイオ医療分野における世界的な拠点である、米国スタンフォード大学Bio-Xを含む研究グループが、科学誌ネイチャー誌2015年6月22日号オンライン版で報告した。

脳の左右にある「海馬」と呼ばれる場所は記憶を担うと知られている。何らかの「エピソード」を記憶しているのはこの海馬となる。エピソードの記憶とは、出来事や会話の記憶となる。海馬で得たエピソードの記憶は1カ月保っていられる。その後、「新皮質」という脳の異なる領域で再度保存される。記憶は脳の中を移動する。

脳の神経細胞ではとげ状の足が伸びて、ほかの神経細胞とつながりを保っている。そのつながる場所を「シナプス」と呼ぶ。そのネットワークで記憶は保たれると言われる。意外と、実際の記憶との関係でそのつながりの変化を観察するのは難しい。研究グループによると、以前の研究では脳の表面に近い「新皮質」では確認されている。

新皮質では、神経細胞から延びるとげが出たりなくなったりした。新皮質のとげの半分は継続して出るのに対して、残りは5日~15日ごとに入れ替わる。新皮質の神経細胞で延びるとげの半分は記憶の長期保存庫の役割となり、残りの半分は新しいことを記憶し、忘れるための調整弁になっている。まさに記憶を保つ期間と関係している。

研究グループは同様な神経細胞の動きが海馬でも起こっていると考えた。研究グループは脳の深くにある海馬を観察するため、「マイクロエンドスコープ」と呼ばれる特殊な針状の顕微鏡を使用して、神経細胞の動きを分析した。研究グループはネズミの海馬の神経細胞同士がつながる様子を観察することに成功。海馬領域では、3週間~6週間ごとに入れ替わるとげがあると確認した。ネズミのエピソード記憶の継続期間とほぼ一致した。

やはり脳の神経細胞は、神経細胞のつながりにより記憶を保っていた。

文献
Brain connections last as long as the memories they store, Stanford neuroscientist finds
http://news.stanford.edu/news/2015/june/memory-monitor-biox-061715.html
Attardo A et al. Impermanence of dendritic spines in live adult CA1 hippocampus. 
Nature. 2015 Jun 22.[Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26098371

エビングハウスの実験、忘却曲線

エビングハウスの実験結果からわかることは次の二つ
・時間がたてばたつほど、おぼえなおすまでの時間がかかるようになる。
・復習までの時間が短いほど、早くおぼえなおせる(おぼえなおすまでの時間がかからない)。

※エビングハウスの忘却曲線は、1度完璧に覚えた同じ単語を、また完璧に暗記しなおすまでにどれくらいの時間が必要になるのかということを表しています。

実験結果:覚えなおすために必要とする時間。
・20分~1時間後だと、最初に覚えるために必要とした時間の約半分(約50%)の時間を必要とする。
・9時間後~1日後だと、最初に覚えるために必要とした時間の3分の2(約65%)の時間を必要とする。
・2日後~6日後だと、最初に覚えるために必要とした時間の4分の3(約75%)の時間を必要とする。
・1ヶ月後だと、最初に覚えるために必要とした時間の5分の4(約80%)の時間を必要とする。

エビングハウスの実験詳細

参考 wikipedia

ヘルマン・エビングハウス(1850年-1909年)は、ドイツの心理学者。

エビングハウスの実験は、「子音・母音・子音」から成る意味のない単語(rit, pek, tas, …etc)を記憶し、その再生率を調べるというもの。

実験結果
20分後の節約率は、58%
1時間後の節約率は、44%
9時間後の節約率は、35%
1日後の節約率は、34%
2日後の節約率は、27%
6日後の節約率は、25%
1ヶ月後の節約率は、21%

節約率
節約率とは一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合である。式で表すと

(節約率)=(節約された時間または回数)÷(最初に要した時間または回数)
(節約された時間または回数)=(最初に要した時間または回数)-(覚え直すのに要した時間または回数)

例えば、最初にritを覚えるまでに10分かかって、20分後に覚え直したとき約4分かかったとする。この場合、覚え直すのに最初と比べて、6分節約したことになる。すると節約率は、
6(節約された時間)÷10(最初に要した時間)=0.6= 60% となる。

また、最初にpekを覚えるのに40回の書き取りを要し、1時間後に覚え直すのに22回要したとする。この場合、最初に比べて、18回分節約したことになる。すると節約率は
18(節約された回数)÷40(最初に要した回数)=0.45= 45% となる。

復習のタイミングと回数、いつ復習するのが良いのか

復習についてのまとめ

  • 無意識な記憶の保存期間は約30日間。最初に覚えてから30日以内に何度もくり返す。最初に覚えた日から30日以内に何度も同じ情報をインプットし続けると海馬がその情報を必要だと判断し、長期記憶として残るようになる。
  • 復習の回数の目安は4~10回。
  • アウトプットを重視した復習。「思い出す」機会を増やす、小テストや問題集を解くようなアウトプット重視の復習法が効果的。

復習のタイミング、復習日の例

翌日、1週間後、2週間後、1か月後
・当日、翌日、1週間後、2週間後、1か月後
・翌日、3日後、5日後、8日後 (learning solutions)
・翌日、8日後、22日後、52日後 (池谷裕二 式)
・10分後、24時間後、1週間後、1か月後、6か月後 (和田秀樹 式)

和田秀樹、長期記憶を形成する復習のタイミング

出典『大学受験の神様が教える 記憶法大全』和田秀樹(受験アドバイザー、精神科医)

より多くの情報を短期記憶から長期記憶に移行するには適切なタイミングで復習を繰り返さなければならない。復習するタイミングはおおよそ5回。

1回目は、勉強して間もないうち。目安としては学習した10分後が最適。なぜなら、このとき、人間の記憶は頂点に達するといわれているからです。このタイミングで復習を短時間することで、残る記憶にグンと差がつくでしょう。この復習により、記憶はその後およそ24時間低下することなく、ハイレベルな状態をキープできる。

2回目の復習は、学習して24時間後。1回目の復習を忘れないうちに次の復習をすることで、記憶が確かなものになる。この復習によって、記憶は1週間から1カ月程度、高い状態を保てる。

3~5回目の復習は前回の復習を忘れないうちに行う。3回目の復習は1週間後。4回目の復習は1カ月後、5回目の復習は6カ月後が目安。必要であれば、1年後や3年後に復習する。この時はたいてい長期記憶が出来上がっている。長期記憶が出来上がっていると、意識しなくても記憶が取り出せる状態になり、自分の名前や住所のようにすらすらと思い出すことができる。

池谷裕二

池谷裕二教授(東京大学薬学部)によると、海馬の性質を考え、最も効率的な復習のタイミングは、

1.学習した翌日に1回目
2.その一週間後に2回目
3.二回目の復習から二週間後に3回目
4.三回目の復習から一ヵ月後に4回目


出典 http://s-park.wao.ne.jp/archives/1962

learning solutionsの例
https://www.learningsolutionsmag.com/articles/1400/brain-science-overcoming-the-forgetting-curve

学習した翌日に1回目
3日後に2回目
5日後に3回目
8日後に4回目

成績がいい子はみんな10回くらいはやっている

出典 船口明著『きめる!センター現代文』
https://www.souken-j.com/goods/review/ より

「先日ある生徒が落ち込んだ顔で僕を訪ねてきました。「理科が苦手で、どうしても成績が上がらないんです……」。彼はこう言います。「テキストは復習して内容は理解してます」「問題集で演習もしました」「それなのに上がらない」と。僕は聞きました。「問題集は何回やったの?」。「項目にもよりますが、間違ったところは2回、解けたところは1回です」。なるほど。そりゃあそうです。それでは成績が上がるわけがありません。勉強は「繰り返し」で成績が上がっていくものです。

かつて、ある超難関国公立大の医学部に現役合格した女の子は言いました。「私は『天才』なんかじゃないんです。K君みたいに、授業の復習をして問題集を1回解いただけで出来るようになるっていう子もいます。ああいう子は確かに天才です。でも私、理科も数学も10回くらい繰り返して、やっとできるようになるんです。だから私は天才じゃありません。」僕は「はっ」としました。彼女はずっと全国模試の成績が一ケタ台だった子です。正直、そこまで繰り返しているとは思っていなかった。でも、彼女は、「10回やって」その順位にいたんです。しかも彼女は、周りの友達も、成績がいい子はみんな「10回くらいはやっている」って言うんです。

どうでしょう。皆さんは「天才の勉強法」になっていませんか。才能がないんじゃない、繰り返しが足りないだけです。だからできないと嘆く前に、何度も繰り返す。5回やってダメなら10回やればいい。10回でダメなら15回やればいいんです。」

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